「合板・集成材・ムク材」の違い」

<ムク材の乾燥とクレームについて>
住宅に使われる部材は乾燥材に越したことはありません。
それ以前に植物としての理解が必要です。
木材は自然物だから生を使えば縮む・反る・割れるは当然のことです。
昔、山出し(木を切り出すこと)はすべて人力でやっていました。いかに軽くしてかつぎ出すか、
知恵がしぼられていたのです。
切り倒してもすぐに玉切り(必要な長さに切ること)はしませんでした。ある程度の
下枝は落としても梢(木のてっぺんに近いところ)は残しておくのです。
これを葉枯らしと言います。
こうして水分を蒸発させて軽くしてから玉切りをし、人がかつげるようにしていました。
ですから製材所に届くときには半分くらい乾燥した状態になっていました。
ところが今は切り倒されてからすぐに製材されてしまうようになってしまったので、
ズブ生(水がまだたっぷり含まれた)の状態で市場に出てきます。
こんな材料がちまたに流通しているのですから、クレームが出ないほうが
おかしいのです。

<乾燥してあればなんでもOKか>
今の機械化された製品作りには効率第一主義のところがあり
結果としてたくさんの不良品をつくり出しています。
一般の人も含めた業者も乾燥品を望んでいる人が多くいます。これは間違っては
いませんが、根本的なことを理解していないと大きな誤りをおかしてしまいます。
コンピューター化された無人の機械で製材されたものは、我々の目から見れば
3割はハネ物がでます。
機械はタテ目だろうがヨコ目だろうが、一本の木からいかに効率良く製材するかしか
計算しません。
ところが住宅部材はこういう自然に起こりうる「反る方向」が違ってくると不適なところが
出てきてしまいます。
これを通常、「生だから反る」と考えている人がいて、「乾燥してしまえば解決する」と
思われています。
木の性質を無視して作ったものは、乾燥させたからといってすべての問題が解決する
わけではありません。
のちのちに木の本性をあらわしてくるものもあるのです。


<木材の耐久力は条件次第>
たとえば「土台には桧・ひばが強い」からと言ってこれですべてが解決するわけでは
ありません。
仮にバームクーヘンを想像してください。これが丸太の断面だとすると周辺の部分が
白太(辺材)となり、中心に近い部分が赤身(芯材)となります。
12の角をとるにはぎりぎりで18cmの丸太が必要です。
これからとれた角には四隅に辺材部分がはいります。
これは芯持ち一本どりと言い、特徴は丈夫ですが白太(栄養分)を持っているために
虫には好かれます。
耐久性を高めるために通称赤身どりというものがあります。
これをとるとなると赤身の部分が18cm必要になるので丸太の径は25cmくらいの
ものでないととれないことになります。
当然料金も2,3割高くなります。しかし虫に食われないという保証はありません。
一般的にはここまで問う人はほとんどいません。
ただ「皆が桧・ひばが良い」と言われているからと選ぶ人が多いのです。
桧であっても条件が悪ければ植物であるかぎり虫にも喰われるし、腐り、土に
かえっていきます。
いかに乾燥させて使うかなのです。
そのためには風通しが大事な条件になってきます。
この風通しがスキマ風と混同されて誤解を生んでいます。
ムク材はその性質を理解されない人達に使われるのが、一番不幸なのです。

<合板は呼吸しない>
いくら木を原料に使っているからと言っても、耐水性の接着剤でがっちり固められた
合板に、呼吸性は表面部分を除いてほとんどありません。
木質系パネル住宅というものや、木造住宅でも壁下地などに合板を使っているものは
同じようなものです。
水は通してもはがれない、などという都合の良いものはまだ聞いた事がありません。
だから合板造りの家は木質系と言っても木の性質はほとんどありません。
開口部を大きく取り、空気の流れをつくってやるか、大規模の換気装置を設置しないと
よどんだ湿気は入れ替わってくれないのです。


<合板の接着剤について>
合板の歴史は接着剤の歴史でもあり、まだまだ実績が浅くどこまでが信頼できるか
疑問があります。
最近体育館などに使われ、注目されてきた大断面集成材がありますが、これも
接着剤に頼った小木片を継ぎ合わせたものです。
大きな寸法のものが出来ることで非常に重宝がられていますが、出来てから
まだ数年しか歴史がありません。
集成材も含めた接着剤についての未知の怖さを理解しておく必要があります。



<集成材の種類とその特性>
構造用(主として建物の重量を支えるもの)と造作用(内装や仕上げに関するところ)にわけられ、
接着剤の種類も違います。

大きい寸法を必要とするときに、今ではなかなか大径木が手に入りません。
そこで小さな断片の木を接着剤で張り合わせることにより、希望の寸法を作り出し
代用品とするようにしたのです。
木には通常、反り・ねじれ・割れが生じます。
それを小さな断片にして張り合わせることによりそれらを矯正させてしまい、安定した
状態で使うことが出来るようにしたのです。
しかしうまくいくことばかりではないことが後からわかってきました。

<なぜ集成材を使うのか。>
ムク材を理解できる人がいなくなってしまったというほうが正しいかもしれません。
植物には育ってきた環境がのりうつっているから、製品にしたときにそのクセが
当然出てきます。
使う側がそのクセを見抜きうまく使いこなすにはそれ相当の熟練がいるのです。
しかしハウスメーカーのような販売形態では、大学を出て何週間かマニュアルで
勉強した程度の力だけではとてもこれらを習得できるものではありません。
そこで誰でもみんなが同じようにクレームにならずに家を売るように出来るには、
金太郎アメのようにどこを切っても同じになる、つまり品質のバラつきがない家や
部材が絶対必要になってくるのです。

<集成材は万能か>
一見小さなものを集めて張り合わせ大きなものを作るという発想は良いように
見えますが使われ方によってはまずいことも起きます。
何でくっつけているかといえば石油製品の化学物質です。
つながっているのは繊維がからまって大きくなっているわけではありません。
小さな木片が接着剤というつなぎで保たれているわけです。
もしこのつなぎが寿命で劣化したら、残された木片はバラバラに崩れてしまいます。
集成材や合板その他ボード類は接着剤の寿命とともに終わりが来てしまうのです。
100年住宅とかにも使われていますが、実績がないだけに
けして良いものとは言えません。


<火災に対してはどうなのか>
一般には木材の部類と思われているが、これに火がつくと合板と同じようにまず
接着剤から燃え出します。
当然真っ黒な有毒ガスが吹き出てきます。
いまの住宅火災はこの有毒ガスで亡くなっている方が非常に多いのです。
体積比率が違うだけで性質は合板と同じです。


<紙(再資源)としてはどうなのか>
紙を作る場合、製紙会社ではチップとして原料を買い入れますが、そのときに
品質の検査で不純物の混じっているものははねられてしまいます。
合板や集成材は接着剤が混じっているため「不純物混じり」として受け入れして
もらえず、紙にはなりません。
今よりも格段に技術が良くならないと、せいぜい燃料ゴミ程度しか利用出来ず、
リサイクルとしては役たたないのです。


<人工物と天然物との違いを認識する。>
人間が何かを作ろうとしたり加工したりする場合、そこには必ずといっていいほど
化学的な物質が入り込んできます。
合板はいわゆる新建材という部類に入りますが、集成材はずっと木材であると
思っている人がいます。
そのうえハウスメーカーもこれを「木」として宣伝しています。
しかし集成材は製造される段階でたくさんの接着剤を使うため、その性質は
かなり合板に近いものになってしまいます。
情報を発信する側の認識と、受ける側の意識が違うのですから怖い事なのです。

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