「欠陥住宅をなくすには」
<なぜこうも手抜き(欠陥住宅)があとを絶たないのか> これには構造的な問題が絡んできています。 今の住宅は仕事をとってくる者と現場で実行する者が違います。 大工さんは「口べただから」とか「家を建てたいなら頼みに来ればいいんだ」、はたまた 「おれが建ててやる」という人とのつながりを大事に考えないタイプが多く、 片やネクタイをきりりと締めた大学出のマニュアル教育された人を口説き落とすのは 得意の営業マンにお世辞のひとつも言われたら 奥さんとしてはネクタイを締めた人を選んでしまいます。 だがこの接点を取れた人も大工の技術力はないから 結局はこの下に大工の棟梁が入ることになってきます。 実際にはこうして建物に関係ない「ワンクッション」が入ってくることになるから 頭の金額から引き算がはじまってしまいます。 すでにこういう構造が出来てしまっているから、 いくら発注者が2500万円の金額を出していても 中身は2000万円のものしか出来上がりません。 これは中堅・大手になるほど顕著になります。 はねられた500万円は住宅と関係ないところに いってしまうのですが、設計仕様は2500万円のものを要求されるから当然現場に しわ寄せがきます。 どうやって手間を省くか、どうやったら材料費を安くあげられるか、 本来いい仕事をするための知恵がケチるための知恵に いつの間にかすり替わってしまうのです。 この他にもう一つのケースがあります。 それは地元の大工さんに頼んでも「簡単に悪魔に魂を売り渡してしまう人」に 当たってしまった場合です。 仕事をとったらこっちのもの、わからないところではどんどん仕様を落とす、 材料は問題の出そうな安い材を平気で使うし、下職業者も値切り倒します。 今のこのご時世仕事が少ないから、これ又建て主に分からないように仕様が 落とされ、左官・塗装・電気・設備・基礎・建具などさまざまなところで 予算に合った仕事が進められてしまいます。 塗装などはしっかり塗れば15年は保つところ、5,6年でひび割れしてきます。 何年か経てば必ず化けの皮がはがれてきます。 自分の利益最優先のこんな業者に当たったら最悪です。 <欠陥住宅の誤解> テレビなどで報じられている欠陥住宅について感じることがあります。 ゴルフボールが転がるシーン、壁がひび割れた、建具が開かないなどを見ると、 地盤が関係している割合が5割以上を占めています。 粗悪な材や手抜き工事で起こるクレームと、地盤が悪くて起こるそれは違います。 しかしメデイアの人にはひとかたまりの欠陥住宅でしかないのだと思います。 あのNHKでさえピントがずれた報道をしていることがあります。 手抜きや粗悪材でおこるクレームには心が痛みますが、 糞も味噌もいっしょに報道されることに何か割り切れないものがあります。 <これからは欠かせない地盤調査> 良い条件の土地はすでに 従前からの人が住んでいるし、空いたとしても時価がとても高く 一般的には手が出ません。 そこで崖地や谷津など条件の悪いところを造成して 住宅地として売りに出しているところが多くなってきます。 削り地はまだいいとしても問題は埋め立てしたところです。 土地を水平にしていかにも住宅地として適しているかのように 見えても、もとの地層と埋め立てした新しいところがピタッと 接着するわけではありません。 傾斜地に擁壁をたてて盛り土した所などは長雨が続くと旧層に しみ込んでゆきます。 このためこのような状態は長く続くと地滑りをおこしやすくなります。 この状態はずっと変わることはありません。 すでに市内の造成地でこのような前ぶれ的な症状が出てきているところがあります。 やはり他所から越してきて土地を求める場合には 地元の人に聞くか地盤調査は最低条件として必要でしょう。 <木造なのに目利きする役目の人がいない> 今の家造りは注文を取ってくる人と建てる技術者が違います。 しかも営業の分野が付加価値を高めるために材料支給の比率が非常に 高くなっています。 これは一概に悪いとは言いませんが、どうしても最後に利益が最優先されて きますから材料に対して単価を絞られてしまう結果になります。これが何を 意味するか、営業サイドで仕入れられた材には施工する技術者には責任が ないということになります。 図面上で計算された余裕のない与えられた数量の材木で現場を仕上げることになり、 自分の責任でやるなら絶対ハネるだろうという材まで使ってしまいます。 これは納材をする側にも責任があります。 競争が優先され品質はその次になり値段に合う品物があとからついてきます。 営業サイドでは利益優先ですから、うまくわからないようにと技術には使わせます。 技術サイドも仕事をもらっているから営業サイドの言うことをきいてしまいます。 せっかくの目利きする人の人材が生かされないで家が建てられているのです。 <まじめなものがバカをみる住宅性能保証> 個人・会社を含めて健康保険というものがあります。これはいつ何時病気に なるとも限らないからいざという時のためには欠かせないものです。 住宅に関してもその性能を保証しようという制度がスタートすることになったが、 ちょっとこれはおかしい考え方であると思います。 なんとはなく保証してくれるのだから良いと思われがちですが、 病気のようにウィールスにやられて高熱を出し、医者にかかると言ったような いつ襲われるか見えない病気に対して医療費負担を軽くするのとはわけが 違うと思うのです。 つまり誰でもほとんどが病気になる確率をもっているからでここが違うと言っている 点なのです。 住宅とは人が造るものです。テレビなどで報道されている欠陥住宅というのは、 その半分以上が地盤の問題でおきています。 きちんと地質調査をしていれば事が起きる前に分かることです。 残りの欠陥と言われる部分も良い大工さんや工務店に巡り会えば その心配はないし、それが出来なくても自分もしくは専門家にチェックさえ きちんとされていれば起こり得ないことだと思うのです。 つまり病気とは違い、欠陥と言われることの大部分は最初から分かっている ことなのです。 ただ「見ていない」・「見えないところだから分からない」だけで、 はじめから「材料チェック」・「現場を見る事」をやっていれば 「欠陥にならない住宅」に「ムダな保険料」を払う必要などないのです。 この性能保証制度で一番バカを見るのはきちんとした仕事をやっている人なのです。 最終的には建て主にその費用がまわってくるわけできちんとやっている人には いい迷惑の保険なのです。 <なぜ坪単価が一人歩きをするのか> この世の中にたった一つだけしか家の種類がなくて、大きさも同じ、向きが 違うだけなら面積で割った「坪単価」というのも理解できる。 ところが二世帯住宅以外のものはキッチンセット・ユニットバス・トイレなど お金のかかるものが面積にして比例して増えるわけではない。つまり25坪の 家より50坪のほうが面積割すると安くなる。 住宅は部材の集積でありトータルは違うのが当たり前なのです。 しかし相変わらず坪いくらの話をしている人が圧倒的に多い。建て主さんが 言うのならまだわかるが、要望も聞かないうちから「うちは坪いくらでやりますよ」 とか言う業者がいる。 こんな業者にたのんだらわからないところでどんなまねをされるか分からない。 (おかしなおかしな住宅業界) <ゼロエネルギーを実行するためのエネルギー> エネルギー節約という言葉は、先進国の文明の豊かさを捨てずに声ばかりあげて、 単なるパフォーマンス化してしまっています。高気密・高断熱にゼロエネルギーの 言葉を使わないと時代遅れのような錯覚さえします。 しかし裏で行われているのは「それを達成するために多大なエネルギーを消費している」 なんて誰も言いません。 ◎太陽光発電設備生産のため一体いくらのエネルギーを消費しているんですか。 ◎すこしばかりの石油を節約するためにどれだけの断熱材を詰め込めばいいんですか。 ◎高気密・高断熱を達成するために夏の暑さはどうすればいいんですか。エアコンなしでは 過ごせないのをどう考えるのですか。 ◎全熱換気設備を作るのにどれだけ石油エネルギーを使っているのですか。 <なにかおかしい健康住宅> 健康住宅と流行語のように言われますが、なぜわざわざ住宅に健康という言葉を 付けなければならないのでしょう。 この反対語は不健康ということになりますが、それだけに今までのものはだめだったという 裏返しのことを住宅業界自らが認めているということになります。 しかし健康の名を使っている業者が全部健康に良いものを供給しているかというと そうではありません。 いままでのものにちょっと改良された程度のもので堂々と健康住宅と言っている 業者がほとんどです。 しかも改良されたと言ってもホルムアルデヒドだけが低くなりました程度のことで 本質は何も変わっていません。 計画換気をしている住宅というのも同じです。 人の吐き出す二酸化炭素の量が時間当たり何リットルだから一時間に回転率を いくつにするとか まるで病院の集中治療室みたいです。 機械設備を使ってまでしないと健康住宅って言えないんでしょうか。 <不要なものに金をかけさせる変な国> 住宅の中で補助金が出るといえば下水の合併浄化槽と太陽光発電があります。 合併浄化槽は下水が不備だから同じ快適さを得られない不公平をなくすために 市町村が補助するものだから納得がいきます。 しかし太陽光発電は電気が通わないから補助を出しているわけではありません。 そこへ補助金という税金を一個人につぎ込んでいるのですからおかしなはなしです。 電気の製造原価も東電の4倍もかかるのです。しかも設備は何年か経てば必ず こわれるのです。 更新するためには自費負担が必要です。 電気を買い電と同じで売れますと言っても、みんながやりだし買う側(東電)が もう要りませんとか値段を下げますとか言ったらこの関係はあっと言う間に崩れます。 これからの時代、ほとんどの夫婦が外で働き昼間はほとんど家にいないのに 考え方が逆です。 こういうことをやるならもっと学校・役所・病院・図書館・駅など公共の建物で 昼間電気を必要とするところで有効に使うべきです。 そして何年か実績データをとってから一般の人にこれだけメリットがあるから おやりなさいと言うべきです。 こんな採算のとれないものを借金して家を建てる人に良いことばかりしか言わないで 設備させるのですから変な国です。 <住宅火災、家は残るが人は死ぬ> 昔の家は火災になるとそのほとんどがきれいに燃えてしまうことが多かったです。 でも造りが平家だったりもあるだろうが家族が留守で寝たきりのお年寄りがいるなどを 除けば火事が原因で焼け死ぬというのは少なかったように思います。 でもいまの火事は若い健康な人でも有毒ガスを吸って一撃で参ってしまい それから焼け死ぬケースが多いのではないでしょうか。 これは昔といまの内装資材の種類が違うのが原因だと思っています。 ちょっと見ただけでも石油製品の塩ビ商品がごろごろ使われています。 一番の大きな面積を占めるのがビニールクロスです。 次が合板。試しに小さな切れ端を燃やしてみるとわかります。 最初に出てくるのは真っ黒な煙です。これらは木材よりも発火点が低ので、 木が燃え出す前に有毒ガスでやられてしまうのです。 <ウソだらけのローコスト> 住宅を安くあげるコツというのは、柱や内装材を使わないで造るわけには いきませんから、どこを省いてやるか(つまりいかに早く現場を片付けてしまうか) なのです。 これに携わる人(人件費)を詰めるか、がらっと方法をかえて同じように見える 仕上げをするかなのです。 家電製品の生産を見ればよくわかるはずです。 あの流れ作業の中で一個当たりのコストを下げるには秒単位で品物が 管理されます。 住宅も理論はおなじことです。 同じものを短い時間で数多く作るのが競争に勝つことになります。 ただしこれは規格型住宅に当てはまることで注文住宅にはちょっと無理が 生じます。 多品種少量生産というのは機械生産には向きません。 だから「ここは塗り壁にしたい」とか「板にしたい」とか言っても 「いやそれはうちの性能が落ちるからできませんよ」と担当者に断られて しまうのです。 実際には出来ないのではなくてコストが上がってしまい儲からなくなって しまうからなのです。 <寸法だけで木質は問われない住宅部材> わたしのところは丸太を仕入れて製材することをかたくなにしてきました。 その理由としては、いまの住宅部材はコンピューターで効率優先で作られたものが 大部分を占めていて、非常に木の性質を無視した物が多いからなのです。 本来、木はバームクーヘン状に成長していきます。これは何百年経とうとも おなじなのです。 今までだと山あいの小さな工場で木の性質に逆らわないでセオリー通りに 製材されていました。 側からとるもの、芯でとるものときちんと分けられていました。 つまり一本の丸太からいろんなものが出来ていたのです。 ところが最近はこの製材方法が変わってしまい、いかに生産コストを下げるかに 勢力をそそぎ、ほとんどがコンピューター処理される方法になってしまいました。 なるべく経済効率のよい丸太・原板(再製材用の輸入材)が集められ 従来の3分の1、4分の1の加工料で品物が出来てくるようになりました。 これ自体が悪いわけではないのですが、適材の製材の仕方でないため、 部材として不適なものまで出来てしまうのです。 こういったものが巷に流通してしまい、出さなくても良いクレームを出しているのです。 我々の取扱い材のなかにKD材(キルンドライ)と言い、人工乾燥させたものがあります。 これは乾燥させるための料金がかかるため通常の製品より高いのです。 しかしこれもコンピューターで効率優先で作られた製品なので木の性質は生かされて いないのが沢山入っています。 曲がりが少ないというだけで適材ではないのです。 もう住宅部材として木材を語るとき、適材なのかどうかを判断できる人はあまり いなくなってしまったのです。 <建て主不在の完成見学会> 現場見学会がいろいろなところでやられています。 建売でない限りそこは必ず建て主さんがいるはずなのですが、 しかし、わたしは見学会に建て主さんを見たことがありません。 ふつうこれだけの大きな事業を成し遂げたら(失敗した場合は別として) 建て主さんとしたら皆に言いたくて言いたくて仕方がないと思います。 かわいい子供の写真を年賀状に印刷してばらまいてしまう心境以上だと 思うのですが、けれど建て主さんは見たことがありません。 結論は居られてはこまるのです。 次の客をつかむために「この家はエアコン2台でしたが、あなたの家は 特別全部屋にお付けしますよ」と建て主がいる前では言えないからなのです。 <展示場は金喰い虫> 住宅展示場というものは非常にコストのかかるものなのです。 そとからは華々しく見えるが敷地は借り物で住宅メーカーが所有している わけではなく、土地を提供して運営費をとっている別会社があることを ご存じでしょうか。 出展メーカーとしては常駐応対員数名と営業マン、電気料と建物の償却費、 訪問のための営業車両、地代とイベント開催費を毎月支払っていか なくてはなりません。 これらの経費は月1000万円くらいはかかっています。 訪れる人から見ればただでみられるいいところと思っていても、 メーカーからすればえらく金がかかる代物なのです。 これらの費用がやがて契約する人に上乗せされてくるのです。 <限定一棟500万円のからくり> いまは一時期から見るとずいぶんと展示場に訪れる人が少なくなった。 展示場としては来てくれなければ話にならないのであの手この手を使い 集客努力をする。 月に一度は開かれているハウジングセンター何とか会場のチラシ。 しかしポップコーンやジュース程度のおまけでは賢い消費者は踊らなくなった。 しかし「限定一棟500万円」のチラシ。これは消費者の気持ちをくすぐる。 あっという間に数百人の応募があるという。 しかも土地を所有していてすぐにも建てられるという条件付き。 こんな「おいしい客」の集め方のテクニックは他にないと思う。 当然抽選ということになるわけだが、当日会場に参加してない人は 権利を失うという設定になっていて、応募したほとんどの人が押しかける。 しかし限定一棟であるから当たるのは一人(幸か不幸か別として) 「お一人様当選、その他大勢様残念」だけでは終わらない。 200人参加があったとすると199人は営業マンにリストが渡り後日の猛攻に あうことになる。 メーカーの狙いは当選者はどうでも良い。実は199名のリストを得るために やっているのだ。 <リストさえ手に入ればこっちのもの> 抽選会の大フィーバーの醒めやらないうちに「おいしい客」のリストを持った 営業マンがピンポーンとやってきます。 「先日は抽選会にご参加いただきまして有り難うございました。あなた様の ご希望にお応えすることが出来ず大変申し訳ございませんでした。そのかわりに 今日はあなた様にぴったりのこのようなプランをお持ちいたしました。お話だけでも お聞きいただけないでしょうか。」とやさしそうな顔が踏み込んでくる。 やんわりと断ろうとしても相手は一筋縄ではいきません。 訪問先の顧客リストには土地の公図・権利関係、年収まで調べ 上げてきている。 すでに抽選会まで行っているのだから「その気がない」では断れません。 こんな客を落とすのは彼らにとってはたやすいことなのです。 <売っている家には住まない営業マン> 人にものをすすめる場合、数あるなかでもいいものをと教えられて きました。 しかしこの住宅業界だけはこの教えがあてはまりません。 生活・仕事のために数字をつくることが最優先となり、相手のために なるかどうかは腹でわかっていても目をつぶるというのがこの業界の実態です。 入社したての頃は意味がわからず夢中で売るが、ちょっと経験を積むと 商品のアラがみえてくる。 「こんなもの人には売るがじぶんでは使わない」という営業マンがけっこういるのです。 何々ホームの住宅を売っていても、自宅をとなると近所の大工さんに建ててもらうという 営業マンはざらにいます。 |
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